「兄様、お仕事サボってる。」
ゆったりとしたソファに、兄王が足を伸ばしているのを見つけ、サクラ姫は頬を膨らませました。
「なんだ。ここにはお前向けの戯れ本はないぞ」
「失礼しちゃう。雪兎さんにいただいたお花を
調べに来たんだもん。兄様こそ、なによ」
兄王が手元に広げているのは、分厚い学術書ばかりです。そのほとんどが薬や植物を扱ったものであることに気が付き、姫は兄のそばに腰を下ろしました。
「その鉢植え、雪兎にもらったのか」
「うん。きれいなお花が咲くんですって。
でも、名前を聞くのを忘れちゃったから」
本を覗き込む妹姫を眺め、王はくすりと笑いました。
「名前より、食べられるかどうか知りたいんだろ？」
「ちがうもん！お薬だって言ってたもん！」
「じゃあ、おいしい薬かどうか知りたいんだな？」
「もう…っ」
ぷっと膨れる妹君は、それでも、兄に甘えるようにしてそばを離れません。
「なかなか育たないんですって。お花が咲くの
見たいから、一生懸命お世話するの」
「そうか。確かに、…それはいいな。」
兄王は、静かに笑ってつぶやきました。