日生舞様４００００ＨＩＴ記念ＳＳ

Umbrella

・・・・あ、雨だ・・・・
ふと顔を上げた雪兎は外を見た。
天気予報通りだったな、と思う。

学校の図書館、窓辺のこの席は雪兎のお気に入りだ。
校内がよく見える場所で、何よりも桃矢のゼミがある校舎の出入り口が見えるから。
ゼミは週一だけど、確実に姿が見える場所。
勿論他の日だって、時間だって会っているけど・・・。
でもなんだか覗き見をしているような感じで雪兎はこの時間が好きだった。
桃矢は雪兎がそこから自分を見ていることなど気づかずに校舎から出てきて歩いていく。
途中友人と会って立ち話をすることもある。
足早に通り過ぎることも。
でも桃矢の知らない雪兎だけの時間だ、そこには雪兎の知らない桃矢の姿があった。

桃矢の姿が見えてきた。
ゼミのメンバー達と話しながら階段を下りてくる。
そして階下に着いた。
その時初めて雨が降っていることに気づいたようで、みんなして出入り口で空を見上げている。

・・・傘がない・・・？

どうやら桃矢自身は傘を持たずに来たようだ。
『どうする？　木之本？』
と言うような声が聞こえるような気がした。
たいした降りではないけれど、走っていっても結構濡れるのは確実だ。
雪兎は鞄の中の折りたたみ傘に手を触れる。

・・・迎えに行こうか・・・

でも、それじゃせっかくここから見てきた楽しみを放棄することになる。
そんなにひどい雨でもないし・・・まあ、いいか。
少しだけ桃矢の様子を見ることにした。

桃矢に一人の女性が話しかけた。
手に傘を持っている・・・どうやら傘に入っていかないかと誘っているようだ。
他の男達は走り出すものもいれば、他の女性と相合い傘で帰って行く。
そういった光景の中、雪兎は桃矢を見守った。
桃矢がどうするのか興味があった。

そこだけがスローモーションになったような気がした。
桃矢が目の前の女性から、すうっと真っ直ぐ視線を移した。
頬杖をついて見ていた雪兎は身を起こす。
図書館の２階にいる雪兎。
そして向かいの校舎の入り口に立つ桃矢。
そのお互いの視線が合った。

・・・とーや・・・

時間にしては１０秒もなかった。
桃矢は首を振って、女性の申し出を断ると図書館に向かって走り出した。
その姿を見て雪兎も席を立った。
上手く説明できないけれど、上手く伝えられないけど、
そしてもう桃矢を盗み見ることは出来ないけれど、そんなことはどうでも良かった。
嬉しくて、嬉しくて・・・。
自分を真っ直ぐに見た桃矢の視線に囚われてしまった。

雪兎は部屋を飛び出して階段を駆け下りる。
踊り場で上がってきた桃矢が見えた。
少しだけ自慢げに笑う桃矢に雪兎も笑って応えた。

雨の日の恋人達の風景・・・・。

日生様のお宅「桜紅葉」が４００００HITを突破したのを記念して、アップされたお話です。お持ち帰りフリーということでしたので、早速頂いてまいりました♪
…いいですね～～。なんだか、若い頃の恋を思い出してしまうような（笑）
大好きな人と思いがけず、目が合ってしまった瞬間のドキドキが思い出されてしまって♪

階段の踊り場で、この後お二人はどうなさるのか…。わたし的には緊張の瞬間ですが、雪兎さん、まさか飛びついたりしないでね（笑）
きっと、仲良く二人階段を下りていくんでしょうね♪いつもより、少しだけ近くに寄り添って♪
ああ、幸せ～♪日生様、ありがとうございました♪

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